06
01
2013
川崎重工の稲わらバイオエタノール、収集コストの件

川崎重工の稲わらバイオエタノール、収集コストの件

川崎重工が開発した、硫酸ではなく熱水を使って糖化処理を行うバイオエタノールプラント。研究室レベルの構想ではなく、実証プラントで実証済みなのがスゴイ。
 → 川崎重工が稲わらからバイオエタノール製造 1リットル40円で - 産経
 → 稲わらから「熱水式バイオエタノール製造技術」により バイオエタノールの製造に成功 | ニュース | 川崎重工


売り込み先は海外

売り込み先は東南アジアや南米を想定。

農林水産省の公募事業で、川重は5年間、秋田県で実証試験を続けてきた。稲わらを細かく砕き、発酵させ、蒸留濃縮するプラントとして販売する。売り込み先に化学メーカーを想定、東南アジアや南米などのプラント建設需要の取り込みを目指す。

 バイオエタノールでは、サトウキビなど食用植物を使う技術が普及している。非食用の植物を使うには糖化処理するため硫酸や酵素を使用する必要があった。
 → 川崎重工業、稲わらから低コスト燃料 - 日経新聞


国内の自治体や農協ではなく、最初から海外に目を向けてます。



“40円” は稲ワラの収集コスト込みなのか?

日本だと稲ワラの収集コストがペイしないのでは?という疑問が。

川崎重工と協業した秋田県農業公社によると収集コストは1トンあたり6336円、6.3円/kg。
種苗センターのような公的機関を活用したせいもあるのか、非常に安価。
人件費などの内訳を知りたいところです。

バイオ・エタノール収集コスト
出典: H23 事業報告書 7ページ



より広範囲では 14.6円~22.2円/kg

秋田県のより広範囲を対象としたコスト算定では 14.6円~22.2円/kg。
稲わら価格はゼロとして算出。

バイオエタノール、稲ワラ収集コスト 秋田県
出典: 秋田県 バイオエタノールのコスト



茨城県では 36.7円/kg

一方、茨城県の関本稲わら供給組合では 36.7円/kgという価格が出てきます。
これは一般農家から稲わらを有償で買い取っていることが大きな要因です。

バイオエタノール、稲ワラ収集コスト 茨城県
出典: バイオエタノール生産に向けた稲わら等の収集運搬作業体系に関する研究



稲ワラを無償提供する農家は少ない

稲わらがおからのように産業廃棄物として処分されているのであれば話は簡単ですが、実際は農地へ還元する有機物としての役割を担っています。

そのため、全面的に無償提供という農家はそう多くはありません。

バイオエタノール 稲ワラの使用量
出典: 秋田県 バイオエタノールのコスト



1Lあたり、7.5kgの稲わらが必要

川崎重工によれば、バイオエタノール 200Lあたり乾燥ロール×6(計1.5トン)が必要。
なので 1Lあたり 7.5kgの稲わらが必要となります。

秋田県農業公社の貯蔵施設から運ばれてくる稲わらは、コンバインで稲刈りした後、天日乾燥したものを直径約1.2mのロール(重さ約250kg)にし、最長1年間の保管を考えて防水フィルムでラッピングしてある。
(略)
実証設備は、1日に6ロールの稲わらから約200Lのバイオエタノールを製造する能力がある。
 → 川崎重工 ニュース


安価な秋田県農業公社 6.336円/kgでも約47.5円/Lかかることになります。おそらく製造コスト 40円は稲わら収集コストを除いた製造原価なのではないでしょうか。


参考)原料別のバイオエタノール価格

バイオエタノール 原料別バイオエタノール価格
出典: 秋田県 バイオエタノールのコスト


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 → 国産稲わら自給率100%を目指して
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