04
23
2015
携帯キャリアはなぜ自分の首を絞めるMVNOをやるのか

携帯キャリアはなぜ自分の首を絞めるMVNOをやるのか

携帯キャリアはなぜ自分の首を絞めるようなMVNOをやるのか。
不思議に思ったことはないでしょうか。私は疑問に思っていた口です。

いまの携帯市場は総務省曰く「協調的寡占」状態。場を乱す新規参入はキャリアにとって邪魔なはずです。

携帯キャリア3社 協調的寡占
出典: 2020年代に向けたモバイル分野の競争政策の在り方


調べてみると面白い話だったので書いたみたいと思います。



義務だから

理由1、ひねりも何も無いですが、大キャリアには回線提供の義務があります。

「MVNOやりたい」と言われたら拒否できません。
(但し回線提供の価格設定は自由なので、実質拒否れるみたいですが)

MVNO接続の義務
出典: NTTドコモ意見

ここで面白いのは、ドコモだけシェアが大きいという理由から禁止行為、縛りがある点です。

縛りの1つにMVNOに対して、条件の差を付けてはならないというものがあります。ある1社に出した条件は差別無く、すべてのMVNOに提供しなければなりません。

逆に言うと、auとソフトバンクは差を付けることが可能です。

たとえば、ソフトバンクのモバイル接続料はドコモの3倍と非常に高いですが、ソフトバンクの子会社ワイモバイルにだけ安くするといったことが可能です。一方、ドコモはOCNだけ安くといったことができません。


この辺の話は、ドコモへのインタビュー記事が面白い。他社を皮肉るドコモ。

なぜああいう額を出されているのか。相対でやられるときは、ああいう額ではないと思います。どうして差が出るのか、弊社からすると不思議です。
 …略…
電気通信事業法の30条に「禁止行為規定」があるため、どこかのMVNOと組もうとすると、ほかの人とも同じようにやらなければいけなくなってしまいます。
 → 乱立する格安SIM市場をドコモはどう見ているのか? - ITmedia Mobile






電波割り当ての選考要因に

次の理由として、MVNOを頑張ると、新たな電波がもらえます。

総務省がMVNO実績を考慮して、電波の割り当てを決めると宣言してます。

これまで総務省はさまざまな施策で競争促進を画策してきたが、ことごとく不調に終わってきた経緯がある。例えば05年には新規参入の3社に対し電波を与えた。
…略…
これも結局はKDDI系・ソフトバンク系の通信会社の手に渡り、経営の独立性はほとんどみられない。

 こうした経緯を踏まえ総務省は、今後の大手各社への電波割り当てでは、電波を持たない新興系MVNOへの貸し出し実績を重視する姿勢を打ち出す。「これ以上骨抜きにされてなるものか」。MVNOを軸にした競争促進にかける、総務省の強い執念が見える。
 → 格安LTE巡り暗闘 総務省vs携帯大手3社 :日本経済新聞



MVNO実績だけで決まりはしないでしょうが、無碍にはできません。

総務省 MVNO実績で電波割り当て
出典: 電波政策ビジョン懇談会 最終報告書

総務省 MVNO実績で電波割り当て 構成員意見
出典: 電波政策ビジョン懇談会 中間とりまとめ概要



既に公約済みの話もある

MVNO実績については将来的な話だけでなく、既に公約された話もあります。いわゆる“プラチナバンド”の割り当て時に、MVNO拡大を各社公約しています。

MVNO
出典: 2014年 ケイオプティコムが提出した意見


ここで疑問に思われるかもしれません。ドコモはMVNO多いけどauやソフトバンクはほとんど無いじゃないかと。



auは今年からやる気出す?

auは今年から「やる気出す」かもしれません。

MVNO向けの接続料を昨年のほぼ半額、ドコモ並みに引き下げることを発表しています。

 → au系格安SIMがさらに充実へ、KDDIがMVNO向け接続料を半額以下に | BUZZAP!

KDDI(au)は4月1日、2014年度に適用するMVNO(仮想移動体通信事業者)向けのパケット接続料を公表した。10Mビット/秒(帯域幅)当たりの接続料はレイヤー2接続(LTE直収パケット接続機能)が月116万6191円など。2013年度に比べてレイヤー2接続は57.6%減なった。
 → 2015年4月 - [創刊号]KDDIの接続料が最大57.6%減/ 2014年末のMVNO契約数は892万:テレコムインサイド



ケイ・オプティコムがKDDI網を使ったMVNOをはじめてますが、今年はさらに増えるかもしれません。



ソフトバンクは方針転換か

auよりもやる気無いのがソフトバンク。
価格がドコモの3倍では誰も使いたいとは思いません。

それだとMVNO実績はどうするつもりなのか?と色々資料を見ると、身内MVNOでお茶を濁そうとしていた節があります。

先の資料を出していたケイ・オプティコム曰く、

MNO は、同一グループの MVNO を優先的に受け入れる一方で、自社グループ外の MVNO(独立系 MVNO)を積極的に受け入れておらず、MVNO が実質的な競争促進に寄与している状況にありません。
 → 2014年 提出された意見



ケイ・オプティコムはKDDI系のMVNOですから、ここで批判されているのはソフトバンクに他なりません。

実際、ソフトバンクのMVNOはグループ向けが過半を占めます。

MVNO契約数の内訳

互いにグループ内でMVNO取引を行うことで、実績を積み上げています。

MVNO契約数の内訳
出典: 総務省

これには先のケイオプはじめ、MVNO事業者から価格設定が不透明だと不満が相次ぎます。

MVNO ソフトバンクへの不満

この不満を背景に、2014年夏、総務省が動きます。
実績のグループ化です。

総務省 キャリア グルーピング

資本関係にあるグループ内契約が整理され、水増し分が修正されます。

総務省 キャリア グルーピング 契約数修正

MVNOのカウントも、グループ向けが抜かれてカウントされるようになりました。

MVNO契約数の内訳
出典: 総務省


子会社作戦をやめたソフトバンク

このグルーピングが影響したのか、ソフトバンクはそれまで検討していたグループ企業であるヤフーへのワイモバイル売却案を破棄し、ソフトバンク本体への整理統合を総務省に申請してます。

 2014年03月27日 ヤフーがイー・アクセスを傘下に、新社名は「ワイモバイル」
 2014年05月19日 ヤフーのイー・アクセス買収が白紙に
 2014年07月01日 イー・アクセス、「ワイモバイル株式会社」に社名変更
 2015年01月23日 ソフトバンクモバイルとワイモバイルなど4社が合併へ


だが2014年7月、総務省は周波数帯の割り当てに関して、資本関係などを考慮し、グループ企業として判断するよう方針を変更。この判断によって、ソフトバンクモバイルとワイモバイルを別々の企業とする意味がなくなったことから、両社を合併させるに至ったと見ることができる。
 → 新生ソフトバンクモバイルが誕生した3つの理由 - CNET Japan



消費者目線だと目的のよくわからない売却話でしたが、政治的な動きだったならわかりにくいのも当然です。

テクニカルな子会社運営は「やめた」ということなんでしょうね。


SBが「グルーピングが原因」と明言することはないので、憶測ではありますが、ソフトバンクからMVNO提供されていたディズニーモバイルがこのタイミングで店じまいするのも同じ理由かもしれませんね。




関連
 → 総務省、「モバイル接続料算定に係る研究会」報告書を公表 | マイナビニュース
 → なぜドコモの回線を利用するMVNOが多いの? | マイナビニュース
 → ドコモ「ソフトバンクさんは戦略としてワイモバイルをMVNOの位置に」