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携帯向けテレビとでも言うべき「MediaFLO」と「ISDB-Tmm」
小寺氏のブログで「MediaFLO」の話が。セミナーをされるらしい。→ モバイル放送ビジネスモデルの勉強会 - コデラノブログ 3
MediaFLO はQualcommが開発した、いわば携帯電話向けのTV放送的なシステム。ワンセグをもっと柔軟で高画質にしたものといえる。推しているのはKDDI。ソフトバンクも推していたが、対立候補の「ISDB-Tmm」に鞍替えした。
・ ITPro: MediaFLOとは
・ ケータイ用語の基礎知識 第265回:MediaFLO とは
ISDB-Tmm はドコモが支持する方式。ワンセグの延長線上にある「アドバンスド・ワンセグ」とでもいうべきもので、ポジションはMediaFLOと同じ。こちらも有料放送、ダウンロード型配信などにも使える柔軟性を持つ。
ISDB-TmmとMediaFLOの大きな違いはmp3の‘可変エンコード’に似たことを放送でやれるかやれないか。
ISDB-Tmmは1番組への周波帯域は固定されている。
MediaFLOは放映する中身によって割り当て枠を変化させる事が可能。
ニュースのような動きの少ない番組は少ない帯域で流し、浮いた分をスポーツ中継のような動きのある番組に割り当てるなど電波のやりくりができる。使った帯域分だけコンテンツ会社に請求するというシステムがあれば面白いかもしれないが、あまり決定的な要因でもないか。
→ ISDB-Tmm とは:ITpro
どちらもワンセグに較べるとチャンネル切り替えが高速なのも利点。
◆ 登場が待たれる理由
携帯を対象にしたダウンロード配信も当たり前になってきたものの、基地局と携帯端末で1対1のデータのやりとりをするのは多人数相手だと効率が悪く、TVの代わりにはならない。やはりTVのように多数の端末に一斉配信できる「放送」が必要と考えられている。
MediaFLOやISDB-Tmmの狙いは、ケーブルテレビのような多チャンネル&ペイパービュー可能なシステムを携帯で実現すること。ビジネスモデルは従来の広告収入型、ペイパービュー方式などが検討されている。WOWOWやディスカバリーチャンネルの携帯への有料配信がはじまるかもしれない。
ただ、1チャンネル当たりの視聴者数は圧倒的に少ないはずで広告収入の規模も小さい。
おそらく広告だけで採算を取るのは厳しく、課金、TVショッピング系が増えそう。
・ MediaFLOで目指すのは「放送のWeb化」
・ ワンセグの次の携帯TV「MediaFLO」を使ってみた・米国レポート
・ 変われないワンセグと、その中でのMedia FLOの意義
◆ マニア向けのニッチな番組が放送できる?
一口に動画コンテンツといっても、膨大な制作費をかけたNHKの海外ドキュメンタリーや大河ドラマから、Gyaoが低コストで作っているオリジナル番組、果てはニコニコ動画に上げられている個人レベルの動画まで制作費や品質は様々。既存の地上波は既に強固なインフラとなり、視聴者も多いことから採算レベルが非常に高い。よって視聴者が限定されるニッチな番組の放送は難しい。
新方式はOFDMによって効率良く‘放送’できるうえ、深夜帯を使ってダウンロード用動画を各端末に配信することもでき、実質的に放映枠を増やすことができる。枠が増えることで、より細分化されたニーズにあった、言い方は悪いが低コスト低品質の番組でも成り立つかもしれない。
Gyaoやニコ動などは‘見に来る視聴者’待つプル型のメディアだが、従来のTV視聴型ともいえる‘受け身’の視聴者にアプローチできるプッシュ型でニッチなメディアにもなれる可能性がある。
携帯キャリア3社はそれぞれコンテンツ配信会社を設立し動いている。
ドコモがワンセグに近いISDB-Tmm方式、KDDI、ソフトバンクはMediaFLOを推していたが、2008年11月にソフトバンクの子会社はISDB-Tmm方式に方針転換している。
・ ドコモやフジテレビなど、携帯向け放送関連の新会社設立へ ISDM-Tmm
・ KDDIとクアルコム、携帯向け放送「MediaFLO」企画会社設立
ソフトバンクはMediaFLO派だったが、2008年11月に転換。
・ ソフトバンク、「MediaFLO」に関する企画会社設立
・ ソフトバンク全額出資による企画会社、モバイルメディア企画は方針を転換しISDB-Tmm方式を提案
◆ とはいえ
枠が増え、TVを見ない層にもリーチしやすい携帯ではあるが、採算のとれる新番組で埋めるのはかなり難しいかもしれない。結局既にペイした過去のアーカイブと広告を一緒に流す、ワンセグスタイルのチャンネルが多くなるんじゃなかろうかと思ったり。