次期Galaxy S, iPhoneはおサイフケータイ対応? NFCの謎
NEC、最近よく耳にする言葉です。Near Field Communication、端的に言えばおサイフケータイ的なものを指します。
このNFCを自分なりに整理してみようと思います。
きっかけはこのNexus Sの記事で、いよいよAndroid OSがNFC対応を果たします。
→ Googleの シュミットCEO、Nexus Sを披露。NFC対応&Android 2.3
改めて、NFCとは何だろう?と考えると、これがよくわからない。
よく「Felicaの上位互換」と言われるのですがが、ならば「NFC」対応のNexus Sや対応しそうな iPhone 5は今の‘おサイフケータイ’と同様になり、SUICAやEdyが使えるようになるのでしょうか。
→ アップルがNFC専門家を採用、iPhoneおサイフ化へ前進
どうもそうではないようです。
NFC対応スマートフォン≠おサイフケータイ です
ドコモの人も海外製スマートフォンに「Felica」が載るといいなーと願望的に語っています。
――今後市場に投入されるNFCケータイにFeliCaチップが載るかどうかが、注目されています。
中村:国内で開発されるケータイはこれまで通りFeliCaチップが搭載されます。日本ではFeliCaがこれだけ普及しているのですから、海外のケータイメーカーに対しても日本でビジネスを行う以上、FeliCaも載せてほしいという思いはあります。
市川:今のおサイフケータイはFeliCa専用チップを使っていますが、NFCケータイではFOMAカードのようなSIMチップの中に入れる動きもあります。その中でFeliCaやTypeA/Bのアプリケーションを動作させるとなると、いろいろな課題があります。
→ (11)NTTドコモに聞く「おサイフケータイ」「NFC」の未来
つまり国内的には「NFC対応」ではなく、「Felica対応」が必要になってきます。
現時点ではFelicaはほぼ国内専用仕様のため、こんな厳しい意見もあります。
世界最大の携帯電話事業者団体であるGSMAは、このオサイフケータイを国際的に互換性のあるシステムとし、世界中何処でも同じ決済システムを再利用できるようにということでいくつかの勧告(これとかこれ(リンク先PDF注意))を策定しました。ちなみにこのGSMAには、KDDIを除く日本の事業者もすべて加盟しています。
実はこれに先立つちょっとした流れもあったんですが、結果として、Felicaは落選しました(上のリンク二つ目PDF(2008年11月)でFelicaが完全に消滅しているのがわかるかと思います)。これにより、携帯電話を使った決済システム(つまりオサイフケータイ)の世界標準は、Felica以外の2方式、ISO 14443 TypeAとTypeBに決定したわけです。
→ 海外オサイフケータイ事情 - PHS-MOBILE.COM
ここで出てくる「GSMA」は日本のガラパゴス化の代表例でもある第二世代携帯「PDC」vs「GSM」のGSM方式を策定した組織です。最近では充電コネクタはmicroUSBに統一してね、という勧告を出したりしてます。そこが(必須仕様から)Felica除外を決めたことで、PDCの二の舞が頭をよぎることとなります。
もちろんGSMAの必須仕様から外れただけで、Felicaを載せるのは自由です。ただ最近は人気スマートフォンをいかに速く導入できるかがキャリアの命運を左右しつつあり、結果として力関係が変化。仕様決定の主導権が各国キャリアから世界展開する携帯メーカーへと移りつつあります。
その携帯メーカーにとっては世界標準を満たしつつ、いかにコストパフォーマンスを高めるかが重要です。必須仕様のNFCには対応するけど、コストのかかるFelicaは非対応という展開は十分考えられます。HTCのように前向き(?)に考えているメーカーもあるにはありますが、AppleやSamsungがFelicaに言及したことは今のところほとんど無いはずで、「携帯2個持ち卒業!」と喜ぶのはやや早い気がします。
→ [CNET Japan] 「いずれはFeliCaに対応せざるを得ない」--HTC
AppleやSamsungといった影響力のあるメーカーをFelica対応に向かわせるには要はFelica対応コストを、対応によって高まる便益でカバーできればいいのですが、そもそもコストがハード的なコストのみならず、TypeA, Bとのソフトウェア的な競合など色々面倒そうです。
※追記
やはりソフトウェア面が問題として挙げられています。
→ Samsungの東アジア担当者『GalaxyへのFeliCa機能搭載は悩んでいる』
■ ガラパゴスなFelica
メーカーの立場に立つと、ほぼ日本だけというFelicaの普及具合も二の足を踏む要因です。日本の携帯市場も規模は小さくないでしょうが、さすがに日本だけだとメーカーの得るメリットも限定的です。
日本以外の円を誇張しすぎでは
Felicaは香港やシンガポールなどアジア圏で採用例がいくつかあるので、そこでのシェアを伸ばして端末メーカーに対応を迫るという作戦もありそうですが。
→ Sony Japan | FeliCa | 導入事例 | 交通乗車券
■ 図で整理
nfc-world.comから図を引用させてもらって、整理してみました。
上記のように「NFC対応」でも「Felica非対応」はあり得ます。
世界シェアではオランダのフィリップス社が主導するType A(Mifare)が圧倒的に多く、コストも非常に安いそうです。
NFCアプリはFelicaと違い、SIM内に格納する案が有力です。
(SIMを使うNFCが検討されている:要会員登録)
逆に見ると、Type AのタスポなどはNFCスマートフォンに内蔵される可能性が出てくることになりますね。
ICテレカは内蔵しても意味なし(笑)
規格のまとめ
■ Felica
改札で0.1秒で処理して欲しいというJR東日本の要求に応える形で高速化。
Type Cと呼ばれるが、実際はType Cとして国際標準を目指すも失敗。Type Cは非公式な呼び名。
のちにカードの規格ではなく、非接触IC通信規格の形で国際規格となる。
出荷数 4億個(PDF)、うち3.5億個は日本というほぼ日本独自仕様な状況
■ Mifare
Type Aとして国際規格化。日本での採用例はICテレカや最近ではタスポ。
世界シェア70%以上、発行枚数20億枚以上。50カ国、650以上の都市で採用。
→ 世界最大のICカードチップベンダー、NXPセミコンダクターズ
■ Type B
モトローラが主体となって開発。CPUが搭載され、高いセキュリティがウリ。
住基カード、IC運転免許証、ICキャッシュカードなどで採用。たぶんカードは高い。
■ ドコモはどうするつもりなのか
ドコモはNFCへの取り組みを進めたい様子。ただGSMと完全に歩調を合わせるには、Felicaが普及しすぎています。今後もFelicaを積極的に普及させていくのか、新規案件から徐々にType A/Bに軸足を移すのか。Felicaを止めるということには絶対ならないでしょうが、比重をどうするのかは気になるところです。
さらに辻村氏は、これからの大きな動きとして携帯電話のNFC(Near Field Communication)対応にも言及した。日本の携帯電話はType Cに準拠したFeliCaの搭載が主流となっているが、韓国や欧州ではType AやType Bが使われており、混乱を避けるためにNFCに統一する動きがあるという。
(省略)
ドコモも、世界と歩調を合わせてNFCケータイの対応を進めると辻村氏。ただ、ドコモが端末にチップを埋め込む形でFeliCaを搭載しているのに対し、世界のトレンドではSIMカードにNFCチップを入れようとしているなど実装方式が異なるといい、技術の進展に応じてどうするかを検討する方針だ。
→ [ITMedia] CEATEC JAPAN 2010:スマートフォンとフィーチャーフォンは融合していく――ドコモの辻村氏 (1/2)
市川:国内ではFeliCaを通して培ってきたノウハウがあります。これは、TypeA/Bサービスでも共通に使えるものだと思います。今のおサイフケータイをNFCへ拡張することにより、さらに多彩なサービスの展開が期待できます。NFC版おサイフケータイが日本の市場の中で受け入れられていく方策を考えていきたいと思います。
→ (11)NTTドコモに聞く「おサイフケータイ」「NFC」の未来(下)
とまぁ、つらつらと書いてみましたが、所詮素人の考察ですので、変なところもあると思います。
ご指摘いただけたら嬉しいです...
■ 参考URL
→ NFCは次世代近距離通信のデファクトとなるか - @IT
→ STマイクロとNXP、AndroidでNFCを利用可能にするAPI開発で提携 | EE Times Japan
→ ITmedia ビジネスモバイル:「インターナショナルおサイフケータイ」も夢じゃない――ソニー
→ ITmediaモバイル:ISO 14443【あいえすおー・いちよんよんよんさん】
→ 先進事例2 - Blog ’bout Creditcard,E-Money & WebMarketing
→ 非接触ICに最適化された「FeliCa」の正体 - @IT
→ RFIDの基礎と最新動向(8):非接触ICカード・後編 拡大を続ける非接触ICカードと電子マネー | WBB Forum