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竹熊健太郎×赤松健 対談 個人的感想

「5年後には漫画界は崩壊するかもしれない」という点で意見が合致する漫画家 赤松健氏と、編集家の竹熊健太郎氏による対談。未来の結末という点では一致するのに、その対策案が全く違っていてとても面白かったです。

 → Vol.1:電子出版時代における漫画編集者のあるべき姿
 → Vol.2:雑誌でなくコミックスで利益を得る構造は、オイルショックがきっかけ
 → Vol.3:プロデュース能力がある漫画家の寿命が来たとき、業界がポッキリ折れる
 → Vol.4:これからは年収600万円や800万円の漫画家が増えるかも
 → Vol.5:漫画はどこへ向かうのか

ヒット、バント狙いでいいという竹熊さんの方が縮小均衡かもしれませんが今のトレンド(環境)にあった考えのように思います。兼業農家ならぬ、兼業漫画家時代。赤松さんは大成功を収めた漫画家として、御自身の成功体験が将来構想の礎、目標になっている感じです。

毎年のように売り上げダウンのニュースが流れる音楽業界もマンガ界と似たようなもので、B'zや中島みゆき、桑田佳祐のような「超大物」アーティストは団塊世代と共に絶滅しそうな気配です。バブル以降、コブクロやゆずなどポツポツと「大物」アーティストは生まれてますが、ミリオンを連発するような「超大物」アーティストはサッパリです。

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若い世代に金が無いというのもありますが、よく言われる理由の1つが「多様化」

昔はメディアといえばラジオにテレビ、雑誌などある程度限定され、その影響力も絶大。ところが今ではことごとくかつての神通力を失っています。プロ野球人気の衰退などはその影響をもろに受けた結果だと思います。

みんなテレビや雑誌を見るだけでなく、SNSもするし、ニコ動も見る。モンハンやったり、Greeで無料ゲームやったりと、やることは山ほどあります。学校帰りに本屋に寄ってマンガ雑誌を買う前に、携帯を開いて時間を使ってしまいます。この生活スタイルの前ではちょっと漫画が面白くなってもそもそも見てもらえず、かつての栄光は取り戻せそうにありません。

漫画を読むのはもっぱら漫画好きか、メディアミックスでよそから流れてきた人間となればクリエイター側もホームラン狙いではなく、竹熊さんの言うヒット、バントを狙って、手堅く小さくまとめるのを前提にするのが当たり前になっていくと思います。

日本だけでホームランという成功ルートは今後も残るとは思いますが、別の方法として日本でヒット、アメリカでもヒット、中国、ブラジル、欧州でもそれぞれヒットを積み上げてホームラン相当にするような道も拓けていくのかもしれません。このルートに一番近いのは赤松さんのJコミのように思うのですが、Jコミは絶版本限定なのが残念です。