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[国内] 大前研一氏の福島原発事故 評論

評論家、コンサルとして有名な大前研一氏ですが、元はMIT原子力工学科博士課程修了、日立で高速増殖炉設計に携わった経歴を持つ原子力の専門家でもあります。

元東芝の格納容器設計エンジニアの方に近いですが、大前氏の方は経営者目線が若干入っているせいか、やや俯瞰した位置からの見方のように感じました。
 → Togetter - 「福島原発の状況を、原子炉の元・技術者が語る」

3月13日(日)、1号機爆発後、3号機爆発前での読解です。

YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=U8VHmiM8-AQ

※ 追記
昼間は帯域圧迫で、動画は避けた方が良いのでしょうか。
とりあえず内容というか、概略を書き出しておきます。


■ 設計について

地震と津波で2基のディーゼルがダメになり、おそらく変電所にも問題が生じ、外部電源も入ってこなくなった。電源で全てが絶たれた。設計思想として1台だけ原発を運転させておけば、電源が供給できこの問題は回避できたかもしれない。またディーゼル2基ではなく、1系統は太陽光発電にするなど系統を違えておくべきだった。外部電源(変電所)も複数用意すべきだった。

そもそも原子炉を6基も同じ断層に、あれだけ集めてしまっているのが間違い。
住民対策のしやすさから、置きやすい場所に集めてしまっている。
集めているといくつあっても同じ条件で全部ひっくり返ってしまう。


■ 冷却が失敗したら

空だきで溶けるともう1回臨界になって暴走することはある。
その場合、核分裂が急加速するので体膨張が起き、飛び散って圧力容器を破る。
圧力容器の外側に出るけど、それで終わり。

アメリカの炉心が溶けて中国まで行ったというジェーン・フォンダのチャイナシンドロームは嘘の物語。(炉心のペレットは)主としてウラン酸化物。2700度で溶けて火の塊になると鉄は溶かすものの、下にはボロン入りの水がある。
丸まって臨界になっても膨張してその時点で暴走は止まる。

炉心のメルトダウンが起きても、格納容器に十分な水があればチェルノブイリ型まではいかないだろう。


■ ジルコニウム

昔の被膜はジルコニウムでできている。今はステンレススチールでできている。
ジルコニウムは高温の水蒸気と化学反応を起こしてジルコニウム酸化物になる。
そうなると脆い。核分裂の生成物、ガスや固体もあるが、それが飛び出してくる。
水素は圧力容器のどこかから漏れ、格納容器からも漏れ、上へ上へといき建屋に貯まった


■ 水素爆発

水素がたまることはある程度想定されて、普通は水素を酸化させて水に戻す装置がある。
しかし電源がないために動かない。ブロアウィンドウも電源が無かったために動かない。
最終的には誰かが決死隊で窓を開けに行くしかなかった。

水素爆発によって放射性物質は相当広範囲に飛び散ってしまった。
リアルな核分裂物質であるヨウ素が飛び散ったと言う点ではチェルノブイリより悪い。

(※ 『チェルノブイリより悪い』と語っていますが、ほかで『チェルノブイリよりはるかに少ない』と語っており、実際ヨウ素はチェルノブイリでも飛散し子供を中心に被害を出しています。そのため、おそらく「スリーマイル」と言い間違えたのではないかと思われます。twitterにて増田オカヨさんからご指摘いただきました。)


■ 放射性物質の飛散について

大前氏、MIT時代に半減期50年の放射性物質を飲んでしまったらしい。だからというわけでもないでしょうが「この程度は大丈夫」。

チェルノブイリに較べれば遙かに少ない。出てしまったがそんな最悪なことにはならない。しかしスリーマイルよりは酷い。水素を逃さなかったのが大きい。

社会的には大変。農作物や漁業など賠償だけで無理だろうと。
そして事故レベルは「6」と判断。ちなみに仏核安全局も同等の見方をしています。


■ 原子力産業

アメリカのスリーマイルがそうであったように、もう日本の原発は海外には売れない。東電のような民間企業にはもう原発運営は続けられないだろう、やるなら政府がやるしかない。

いくら巨大地震でも、あれだけのバックアップが全てダメになってしまった。これがあるから大丈夫と言えるものが無い。最後の砦の格納容器は耐えたが、水素を漏らし爆発させてしまった。国民への説得力を持ち得ない。


■ 電力政策

原子力にとって代わるエネルギーには言及せず。原子力をもう一度やろうと世論を説得するよりも、日本は今後ほとんど成長しないのだから、消費電力35%カット、節電で乗り切るしかないとの結論。


■ プルサーマル

3号機で使っていたプルサーマル推進も無理。
少なくとも東電はリスク取れないだろう。


■ 原子炉以外

また1年間限定、東北復興消費税1%アップ案を提示。
増税分の2兆円でより高台に街を復興させる。
これなら国民にも受け入れやすい。

おまけで枝野官房長官の評価が高い。


■ その他

逆に同じMITの人でポジティブな評論もあります。
 → MIT研究者Dr. Josef Oehmenによる福島第一原発事故解説

こちらも載せてはどうかとメールを頂いた解説ページです。追記。
 → 原発に関するQ&Aまとめ+ [3/15-02:48更新] | サイエンス・メディア・センター


いつもながらまとまりのない駄文ですみません。動画紹介だけで留めてここまでやるつもりは無かったので、いつも以上に中途半端な文章になってます。帯域の余裕があるであろう深夜にでも元動画を視聴してください。

原子力やめて節電というくだりはかつての道州制のように斬新すぎて現実味がない気がしますが、いま地方分権が再び叫ばれだしたように、いずれそういう社会を目指す動きが出てくるかもしれません。