- Intel820を推奨したメディアの責任 -
いまから書くことはIntel820(Camino)マザーボードを買った人を怒らせてしまうかもしれません。でもどうしても書きたいので許してください。
「i820マザー買おうと思っているんだけど」 たまにこんなことを聞かれることがあります。こんな時、けっちゃは「絶対に買っちゃダメ」と言っているのですが、i820を購入対象に加える人はあとを絶ちません。どうしてこんなことになるのでしょうか。数々の情報サイトを巡っている人なら、このi820マザーを買おうとは思わないはずです。
確かにi820はインテルが440BXの後継としてプッシュする製品です。しかし、RIMM(RDRAM)を使うことからくる価格の高さ、その割りに低い性能、SDRAMを使った時の性能ダウン、などi820が店頭に並び始める前から、i820に関する悪い噂はWeb上に数多く流れていました。インテルが「将来のため」という大義名分の元、効果のない高いメモリーを買わせようとしているのは明らかでした。
ところがです。全部とは言いませんが、多くのパソコン雑誌はこぞってi820を次世代チップセットと大々的にとりあげ、メモリー帯域をフルに使うアプリでは効果が見られるなどと、さもこれさえ買っておけば間違いないような雰囲気の特集を組んでいました。メディアはいつもそうです。企業との関係悪化を気にしているのか、ろくな検証もしないままあやふやな評価しか書きません。いったい誰のために記事を書いているのでしょうか。
今回のi820騒動で、i820をべた誉めしていた雑誌は疑いの目で見た方がいいと思います。今や個人サイトのほうが雑誌よりも速く、そして生の情報を発信してくれます。中途半端な記事しか書かないメディアは淘汰される時代がそこまで来ていることを願ってやみません。
参考サイト
Rambus再考 ガイドに依存しすぎないこと
Video Card Junkie RIMMを検証する
この記事を見たHさんからメールを頂きました。 2000/5初旬
私は某社(蹴茶注:かなりの大企業です)でメモリ素子 (DIMM、RIMM、SDRAM等)の評価をしています。私の部署でもRAMBUSの調査を行った結果、下記の理由でPC環境にはRAMBUSは推奨しませんでした。
1.インタフェース仕様がPC向きでは無い。
2.コストが高い。まず1番ですが、RAMBUSインタフェースはグラフィック用途のインタフェースとして開発されたため、サイクルは速いが1stアクセスは遅いという仕様になってます。しかしPCはサイクルよりも1stアクセスが重要な仕様になっているため、RAMBUSの性能を発揮するのは難しいです。
そして2番は、RAMBUSは高精度なインピーダンス制御を必要とするため、基板やコネクタのコストが高くなり、コスト重視の PC向きではありませんでした。またDirectRDRAMのチップ面積は同容量のSDRAMに比べて1.15倍程度大きくなります。そのため、どうしても価格が高くなってしまいます。
コストはテクノロジの向上や大量生産である程度抑えることができますが、現状のPCインタフェース仕様が変更されない限りRAMBUSの性能を生かすことは難しいと考えています。PS2のようなRAMBUSに合ったインタフェース仕様にし、コネクタ接続をせずに実装するような環境であれば生かすことはできると思います。
ではなぜIntelがRAMBUSインタフェースをごり押ししたのかというと、チップセットのピン数を減らすことでコスト削減をするためと考えています。RIMMはDIMMに比べてデータバスのピン数が減ることによってチップセットのピン数を大幅に減らすことができます。それによってチップセットのコストも削減できるのです。
RAMBUSの批判ばかり書いてしまいましたが、RAMBUSに採用されているようなシリアルのプロトコル制御のインタフェーステクノロジは今後の主流になると考えてます。
ここで蹴茶からメールの返事をHさんに出しました。
>>ふむふむ。確かにRambusはゲーム機など専用メモリーとしては多く採用されていますね。
>>ビデオカードなんかには最適な気もするんですが、最近の動向を見ているとビデオカード
>>分野でもDDR-RAMのほうが優勢なようで、ちょっと意外な気もしています。
PCへのRAMBUS適用が雲行き怪しくなったせいか、最近のRAMBUS社はしきりにPS2に採用されたことを宣伝していますね(^-^;) しかしPCにRAMBUSが採用されてからRAMBUS社のライセンス料が跳ね上がってしまいました。PCは常にコストと戦う宿命にあるため、このライセンス料は自分の首を絞める結果となっています。ビデオカードメーカも、コストが高くライセンス料が必要なRAMBUSの採用は難しいと思います。
>>インテルにしてみれば、EDOからSDRAMの時のようにすんなりと移行していくと思っていた
>>のでしょう。インテル自身はRambusにライセンス料を払う必要がないというのをどこかで
>>聞いたことがあります。自分への負担でもないので、気にしなかったのかもしれませんね(^^;
今はAMD等のIntel互換CPUがあるため、EDOからSDRAMへの移行時にくらべてIntelの支配力は格段に落ちています。IntelがRAMBUSを採用するときに、IntelはRAMBUSに対してライセンス料を払わなくてもよい契約になっているのだと思います。Intelはライセンス料やコストダウンをメモリメーカに押しつけ、自分だけ美味しい思いをしているのです。
>>日経エレクトロニクスに書いてあったことですが、例の日立提訴問題がのどに
>>刺さった魚の骨のように、DDR-RAMの普及を妨げているとか。ぜひ日立には有利
>>な条件を引き出して欲しいものです...
日立問題で挙げられているRAMBUS社の特許は下記の3つです。
1.DDR
2.CAS Latency
3.Burst Length
1はDDRの技術そのものであり、2と3はDDRとSDRAMに関する技術です。RAMBUS社はDirect RDRAMを生産していないメーカに対して提訴するようです。日立はDirect RDRAMよりもDDRに力を入れているため見せしめのような形になってしまいました。RAMBUS社自体はメモリメーカではないためクロスライセンスを行うこともできないため、これらの特許を回避するのはかなり難しいようです。しかし、対RAMBUSは日立1社の問題ではないため、多くのメモリメーカが日立に情報提供をしているという噂も聞きます。