ソニー VAIO VGN-TT92DS

評価
GPUIntel GS45
CPUCore 2 Duo
DRAM8 GB
OSWin7 x64
投稿者bp5c
2010-01-05 22:30:04
◆ 購入のきっかけと価格
これまでType Z(VGN-Z90S)を使用してきており、スペック的には不満はありませんでしたが、13.1型というサイズがモバイルをする上では意外と大きく、もっと小型のモバイルが欲しかった事がきっかけです
WXGA+構成が復活したX200sがSL9600搭載でも11~12万程度で購入できたので、そちらにしようかと思っていたところ、納期が1ヶ月以上かかるとのことで断念しました
即納できるような物品を探していたところ、某大手オークションにて展示品のSU9600、SSD256GB(128GB×2のRAID0)、Win7Pro WWAN、BDドライブ、Felica、指紋リーダー、Webカメラ付というほぼフルスペック構成を発見し落札
(余談ですが、ストア出品にもかかわらず説明事項に記載されている内容と違う箇所や本来の付属品が添付しないなどの不備でゴタゴタし、オークションでのPC購入は慎重に購入すべきだと痛感しました)

◆ 体感速度の変化
元々使用していたのがCore2 DuoのT9600(2.8GHz)だったので、スペック的にはダウンしていますが、ULV版でも1.6GHzもあれば当方の行う作業(ワープロ、HD動画観賞と軽いゲーム)程度ならば十分すぎるスペックです
また、RAID0のSSD構成で従来のType Zと遜色ない体感速度を実現しています。
SSDはSAMSUNGのMMCRE28GFMXP-MVBが2枚でRAID0構成ですので快適です
しかし、ランダム4k性能は読み書きともに単体のX25-Mに劣りますので、細かいファイルを読み込むOS起動等や細かいファイルが多いアプリのインストールではちょっと遅いかもしれません。
(それでもSSDなので十分早いですが)
試しにエンコードをさせましたが、メインのデスクトップマシン(i7 870)と比較するとあたりまえですが雲泥の差が出てしまいます(笑)
ゲームもDX9程度までならフルエフェクトでも何とかプレイできそうなレベルです。エフェクトをある程度きれば快適にプレイできますね。DX10レベルはさすがに厳しいですが・・・
元々Santa Rosa自体も優秀なプラットフォームだったので、その後継であるMontevinaもその例に漏れずといったところだと思います。(課題があるとすれば、グラフィックドライバの未熟成ですね)

◆ 液晶の質
真のフルカラー(NTSC比100%)かつType Zでも採用されているクリアソリッド液晶のおかげで、映りこみも少なく綺麗な表示でビジネス用にも使える液晶になっていると思います。特に発色の具合はType Zよりも表現力が増していると感じますが、やはりGS45では液晶の能力をフルに生かせている感じがしません。擬似フルカラーのType ZはディスクリートGPUのGeForce 9300M GSを搭載していることもあり、シーンによってはType Zの方が発色は良いかなという感じがします。過去IntelのSFF版オンボードGPUを搭載していたMacBook Airも現在はオンボードGPUとして9400M Gを搭載しているのですからできないことはないはずですし、また違った結果になったかもしれません
自動輝度調整は、暗いシーンや明るいシーンの入れ替わりをまったく気にせずに勝手に調整してくれるので輝度調整の手間が省けて便利です。ぎらつきがあるという指摘もありますが、当方はそれほど気になりませんでした。液晶のフレームもLEDバックライトを採用しているおかげで非常にスリムです(Type Zも同様の機構で強度的に心配でしたが・・・そういう点ではレッツやThinkPadの方が安心できますね)

◆ キーボード:配列やタッチ
当方所有のノートPCで順位を付けるなら、X61s>>越えられない壁>>W700>Type Z≒RX1>Type Tという感じで、W700からType Tまでの間は僅差レベルです。
過去のThinkPadと比較するのは酷なのかもしれませんが、決してType Tのキーボードが悪いわけではなく、この筐体サイズの小ささにもかかわらず、全キーにおいてキーピッチ17mm、キーストローク1.7mm、キー間は約3mmを確保しているのは評価できます。構造は最近のVAIOお得意のアイソレーションキーボードですので従来のVAIOにあった、キーボードの剛性感の無さは皆無ですし、過去の機種と比較すればキータッチのフィーリングも良くなっており、VAIOのキーボードもやっと使えるようになったと思います。また、X61sよりも優れている点として、静かにタイピングできるのは好印象です。アイソレーションキーボードはメーカーサイトでキーの打ち間違いが少ないと言われていますが、特段そのような印象はありません。少なくとも私はこの文章を書いている際にも結構打ち間違えています。(笑)このあたりはユーザーによって意見が分かれそうですね。
Type Zのように2.5mmとはいいませんが、もっとキーストローク(2mm程度)とキーを打ったときの反発力を心地よいものにすればより良いキーボードになるのではと思います。
改めてキーボードに関してはキータッチのフィーリングを研究しつづけてきているThinkPadを越えるのは至難の業なのだと感じました。(ただ、W700のデキを見ているとちょっと不安ですが)

◆ サウンド
開発サイドはBlu-rayウォークマンとしてこのType Tを位置づけているようですが、ステレオスピーカーは所詮ノートPC用ですので過度の期待は禁物です。S/N比106dbのsound realityも付属スピーカーで聞く程度だと、非搭載機種であるType Zと比べても差はわかりません。ただ、イヤホンをつけるとその印象は変わります。ノイズキャンセル機能付だったので、付属のイヤホンで試してみましたが、確かにキャンセル機能が効いており、雑音はシャットアウトされており、クリアな音が出ました。ノイズ源だらけのPCから出るものとしては意外と良い音質でヘタなオーディオプレーヤーより確実に上と感じました

◆ 筐体:質感や強度、コネクタ配置
筐体はプレミアムデザインのノーブルテキスタイルです。プレミアムカーボンが希望でしたが、上品な色で確かに女性向けなデザインだと思います。明るい色に合わせてバッテリーの色(通常は黒ですが、このカラーはシルバー)を変えてくるのはSonyらしいと思いました。
VAIOの欠点ともいえる相変わらずのUSB2端子のみ(しかもすべて左手手前側に並んで配置)ので、装着するUSBデバイスによっては干渉して1つしかつけられない可能性があります。採用例が少なくなってきたIEEE1394端子を廃止してD-Sub端子を、元々のD-Sub端子部分をUSB端子にしても良かったのではと思います。
Type Zの時にも指摘してますが、USB端子2つは致命的だと思います。トラックポイントはないのでマウスとUSBメモリをつけたらそれですべてふさがってしまい、まったく余裕がありません。せめて3つは欲しいです。
これだけプレミアム性を持たせておきながら、左上部にあるHDMI端子とイーサネット端子がプラスチックのカバーで覆ってあるだけになっているなど、これがプレミアム?と感じる箇所もあります。
また、SonyらしくMemoryStickが重視されているためSDが筐体下部に追いやられ、かつ引っ込んでいるので挿入しにくいのはマイナスですね
◆ 排熱:筐体の温度
発熱するものはCPUとGPUぐらいですが、ULVのSU9600とSFFのGS45なので、低音やけどをするような温度にはなりません。Type Zと違い廃熱に無理をしている感じはありません。

◆ 静粛性:HDD, 光学ドライブ, 冷却ファン
Type Zだとフル稼働時は非常に目障りな排気音がしていましたが、この機種の場合はフル稼働状態でもかなり音は抑えられている印象で、ワープロ程度の作業時はクロックが800MHzまでクロックダウンするのでファンレスレベルの静粛性に匹敵します。
SSDなので、ストレージから発生する音は皆無です。
搭載されているSSDはSAMSUNGのMMCRE28GFMXP-MVBの128GBが2枚でした。
光学ドライブも稼動時はそれなりの音です

◆ モバイル:軽さ、ACアダプタやバッテリーなど
購入した個体のACアダプタが本来のVGP-AC16V13ではなく、なぜか2世代前のTX世代のV7でしたが、V7でも問題なく使用できました。急速充電モードとやらに目をつぶれば十分ACは小型化可能であったと思います。
後に本来のACも到着して比較してみましたが、Type Zほどではないにしろモバイルを名乗るにはかなり大きいですね。V7ぐらいのサイズがベストだと思います。
バッテリーの持ちはさすがにULV版CPUのおかげか、東芝のRXシリーズ並みに持ちますね。当方Lバッテリーでフル充電し、Wimaxモジュールと無線LANによる動画ストリーミングを行いましたが、使い切るまでにかなり時間がかかりました。1日中の会議はACアダプタなしでも余裕で持ちそうです。ただ、RX1は標準バッテリーで約1.1kgかつ10時間駆動なので、RX1の低消費電力設計には驚かされますが・・・
505の後継としての位置づけであるType Tは年々サイズと重量がアップしてしまっているので、ビジネス向けに使えることは使えますが、無理にサイズアップせずもっと小型軽量設計でも良かったのではないかと思います

◆ その他
小型かつハイスペックで価格は問わない方にはお勧めですが、逆にその条件が飲めない方にはまったくお勧めできません。
また、ACアダプタはモバイルとしては結構大きめですので、急速充電を犠牲にしても小型のACが欲しかったと思います。
ただ、このサイズでBDやRAID0のSSDといった、ハイスペックマシンに求められるコンポーネントを搭載してくるSonyの熱心さには感心します

◆ 総評
キーボード(-10点)
ACアダプタのサイズ(-1点)
グラフィック性能(-5点)
液晶の剛性感(-5点)
価格(-10点)
インターフェイス(USB)(-2点)
バッテリー駆動時間(+10点)
小型とハイスペックの両立(+5点)
メモリーカード(SD)の配置が悪く挿しにくい(-2点)
合計80点

結果として購入してよかったと思います。長時間駆動かつ軽量、さらにこのサイズでRAID0やBDを搭載してきたのはSonyならではのこだわりが現れているのでしょう。
しかし、10インチ~12インチ未満のモバイルノートはネットブックやCULVノートがメジャーになってきた今、これまで20万円台以上を確保してきた聖域もついにデフレ競争に巻き込まれてきた感があります
レッツも既存のULVから通常電圧版CPUに変更せざるを得ませんでしたし、このType Tもその流れには逆らえないと思います。当方の構成を現在のTT93シリーズで構成すると約32万程度です。この価格ならば高価格帯のCULVノートでも2~3台ぐらいは購入できますから、ますますType Tの立場はなくなっていく気がします。
Sonyのものづくりに対するこだわりは評価したいですが、上記のような事情を考慮するとそれなりの付加価値がなければこのシリーズも淘汰されてしまうのではないかなという気がします

また、追い討ちをかけるようにMontevinaのSFF版がCULVノートという低価格ノートのジャンルを構成するコンポーネントとなってしまった以上、このType Tの現在の値付けは明らかに時代錯誤としか言えず、Arrandaleプラットフォームに変わらない限りは今後確実に売れないでしょう。
CULVノートとチップセット等、基本コンポーネントは一緒なのにあえてType Tを新品で購入する理由が見当たりません。

ブルーレイウォークマンという位置づけのType Tにおいて、あえてBDライターを搭載した理由も疑問に感じます。Type Aのようなクリエイティブノートであれば理由はわかりますが、あえてType Tに搭載した理由はイマイチよくわかりません。
出張等でBDを焼くシーンはまず考えられないですし、HD動画を見たいならBDリードオンリーのドライブにするとか、SDカードやUSBメモリ等にデータを入れるとかすれば十分かのうなので、無理にBDライターを突っ込む必然性は無いと思いますし、そもそもこれだけBDドライブの価格が下がったにもかかわらず、直販サイトではDVD比5万円UPという値付けが異常すぎです。
(ゼロスピンドルにして、USB端子やPCカードを追加するなどしてもらったほうがまだ良いのではという気がします)
Sonyはコンシューマー向け機器の製造は得意ですが、ビジネス用機器の製作は下手だなという感じがします。
やはりVAIOは「道具」ではなく、「趣味のツール」なので、正直ビジネスシーンで積極的に使える気がしません。
その点はレッツやThinkPadが優れていると思います。
VAIOにビジネスモバイルとしての資質が欠けている理由が今回のType Tを所有して改めて分かりました。
(よく考えたら現行Type Tのレビューって無かったのですね。投稿する直前に気づきました)