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次期iPhone、インセルだったり、OGSだったり

iPhone 5 はインセル型ディスプレイを採用してますが、次期iPhoneがどうなるかという話。

インセル型ディスプレイはタッチパネル機能を液晶に取り込んだもので、従来のタッチパネルが不要。薄型化が可能になります。


インセル継続説

アップルは次世代iPhoneでもインセルタッチパネルを継続使用説。
 → Apple will most likely continue using in-cell touch panels in its next generation iPhone

理由
 ・ 生産性の悪かったインセルも歩留まりが70%まで改善
 ・ OGSはインセルに較べて強度が30%劣る
 ・ OGSはインセルに較べてコスト高



インセル放棄でOGS採用説

こちらは逆にインセルの歩留まりが悪すぎるので、OGS(One Glass Solution)乗換説。
 → 「iPhone 5S」タッチ技術でシャープらのIn-Cell放棄か OGS採用と台湾紙 - EMSOne



iPhoneのインセルはApple設計説がある

ちなみにiPhoneのインセルは “シャープらの” インセルかというと、ちょっと微妙で、分解レポでは構造がAppleが特許を保有するインセルに似ていることが報告されています。
 → 蹴茶: iPhone 5 のインセル型液晶パネルはApple自身が設計? [11.21]

またこんな話もあります。

一昨日まで台湾に出張していたのですが、そこで興味深い話を聞きました。「米Apple社がタッチ・パネルの新技術開発のために、200人以上を投入している」というものです。

 この新技術とは、表示装置である液晶パネルと入力装置であるタッチ・パネルを一体化するインセル技術とのこと。
 → Apple社が200人以上を投入!? - Tech-On!


日本メーカーが得意とするインセルですが、液晶メーカーお仕着せのものではない可能性があります。



インセルの難点

インセル型は歩留まりの問題ほかに、回路を組み込むことによる開口率の低下、液晶駆動ノイズによるタッチパネルの感度低下などが弱点として挙げられています。

インセルタッチパネル方式の導入は、画面を書き換える液晶駆動時のノイズにより操作の感度が鈍る課題があった。今回は液晶駆動とタッチ検出の時機を分けることで、信号/雑音比(S/N)が同10倍の100と優れる。
 → 日刊工業新聞


この対策で頭をよぎるのはIGZOです。IGZOは液晶駆動を間引き出来る上、回路の微細化にも貢献。うってつけです。あとは歩留まりの問題なのでしょうが。



タッチパネルの利益を誰が得るのか

インセルは液晶メーカーとタッチパネルメーカーの縄張り争いという一面があります。

従来は液晶メーカーが液晶を、タッチパネルをタッチパネル屋が作る分業でしたが、内蔵型はこの枠を壊します。液晶メーカーが全てを提供し、タッチパネルの付加価値も液晶メーカーが独占することになります。(オンセルはカラーフィルターメーカーが付加価値を得る)

タッチパネルをめぐる綱引き

当然、タッチパネル業界からすれば堪ったものではなく「はい、そうですか」とはなりません。逆転の策として出してきた1つがOGSということになります。

インセルで先行できなかった液晶メーカーもOGS採用に動いています。

タッチパネル業界は戦わずにはいられない
出典: Discord In the Touch Industry

OGSではタッチパネルセンサーはカバーガラスに付く。液晶は汎用的なものでOK。
TPKやWintekなどタッチパネルメーカーはセンサーとカバーガラス、一体で提供を狙う。

in-cell vs OGS
出典: 新電子科技雜誌



KindleはOGS採用か?

OGSはAmazon、HTC、Acerなどが採用に踏み切るとの観測。

台湾HTC社、米Amazon.com社、台湾Acer社が2012年上期に、保護カバー・ガラス一体型タッチ・パネル技術「OGS(One Glass Solution)」の採用に踏み切りそうだ。我々、台湾Isaiah Researchは、米Apple社以外の携帯端末メーカーが2012年中にタッチ・パネルのコスト削減に力を入れると見ている。コスト削減の切り札となりそうなのがOGS技術であり、上述の3社がこの技術をボリュームゾーンの携帯端末のタッチ・パネルに採用する可能性が高い。台湾Wintek社、台湾Cando社、台湾AU Optronics(AUO)社の3社がOGS技術の量産体制を整えていると、我々は見ている。
 → 保護カバー・ガラス一体型タッチ・パネル技術「OGS」、ボリュームゾーンの携帯端末向けに商機 - Tech-On!


もともとタッチパネルの付加価値を外部に支払っている企業であれば、その利益を誰が取ろうがさほど問題ではなく、その時々で最適なソリューションを選ぶことになります。



雑感

カバーガラスにセンサーを集積し、液晶は既存のまま薄型化!というOGSのソリューションは強力ですが、インセルの設計がApple製であれば話はややこしくなります。

OGSの設計まで可能であれば同じですが、そうでなければ一旦取り込んだタッチパネルの付加価値をまた手放すことになります。改善の見込みがあるのなら、地道に歩留まり改善に取り組んでいくのでは。


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