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米Dell、マイケル・デルCEOとMBOで合意 今後の方針は

Dellが噂通りのMBOを発表しました。
 → 蹴茶: 米Dellが近く経営陣による買収で上場廃止か? [2.1]


報道
 → 米デル、2兆2700億円でMBO マイクロソフトが資金 - 日経新聞
 → デルが株式非公開化を発表、マイクロソフトからは20億ドル調達 - Engadget

公式のプレスリリース
 → Dell Enters Into Agreement to Be Acquired By Michael Dell and Silver Lake | Dell

自社のCEOと合意というのも妙な話に聞こえますが、CEOが全権を握っているわけではないので、取締役会がマイケル・デル&投資会社による買収提案を承認したことで、会社として合意という話になります。(株主が納得するかどうかはまた別の話)



個人向けパソコンはどうなる?

個人的にDellの 個人向けパソコンがどうなるのか、そこが気になります。

デル氏のコメントがリリース文に載ってます。

Mr. Dell said:
“I believe this transaction will open an exciting new chapter for Dell, our customers and team members. We can deliver immediate value to stockholders, while we continue the execution of our long-term strategy and focus on delivering best-in-class solutions to our customers as a private enterprise. Dell has made solid progress executing this strategy over the past four years, but we recognize that it will still take more time, investment and patience, and I believe our efforts will be better supported by partnering with Silver Lake in our shared vision. I am committed to this journey and I have put a substantial amount of my own capital at risk together with Silver Lake, a world-class investor with an outstanding reputation. We are committed to delivering an unmatched customer experience and excited to pursue the path ahead.”


長期戦略でもってソリューションビジネスに注力していくとのこと。

これは前からの既定路線で、同様の話は最近の幹部インタビューでも語られています。

-どの領域にフォーカスするのでしょうか
一つは、デルのソリューションはミッドマーケットにフォーカスしているという点を改めて訴求したい。従業員数で100~5000人の企業に対して、最適なソリューションを提供できるプロバイダーがデルであるという認知を高めたいと考えています。
 → 物事は集中したほうが成果につながる--デル 郡社長 - ZDNet Japan


スティーブ・フェリス氏: 売り上げのうち34%はサービスとソリューションが占めています。サーバー、ストレージ、ネットワーク機器やサービスなどです。成長率は前四半期比で約6%。IT業界全体の状況からいって、高い成長率と言えます。
 デルは、ソリューションプロバイダへの変身(トランスフォーメーション)の途上にあります。顧客に対し、オープンシステムに基づいた、コストパフォーマンスの高いインフラを提供する企業に変わります。
 → インタビュー - デルはソリューションプロバイダーに変身する:ITpro


ハードウェアだけでは儲からないため、ソフトウェア、サービスとのセットで売る。そうすると、どうしても法人向けが重点分野になってきます。


個人向けでも “手厚いサポート” =ソリューションとして位置づけ、苦境を脱しようとしてますが、いまだにコンシューマ部門は赤字です。

デルはソリューションカンパニーへの転換を図っている。今回のハードウェアとソフトウェアとの一元サポート体制への強化は、まさにコンシューマPC領域においても、ソリューションという観点での取り組みを加速する動きの1つだと言えよう。

こうしてみると、プレミアム電話サービスの開始は、ソリューションカンパニーへ脱皮する同社の方向性と、XPSというコンシューマ向けの中核製品の強化、そして、これまで低迷してきたコンシューマ向けサポートに対する評価を改善するという狙いのもとに実施されるものだといっていいだろう。
 → 【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】 デルが個人向けPCのサポートを強化する理由とは 2012年1月





6年前から販売改革に取り組むも成果伴わず

直販専業だったデルが店頭販売に踏みきったのが約6年前。
 → Dell、ついに「直販オンリー」から「店頭でも販売」に踏み切る - ITmedia ニュース

コンシューマ領域に力を注ぐDell
デル氏「現在、全世界において、Dellを取り扱う販売店の数は12,000店舗に達し、コンシューマ市場におけるDellのシェアは6%にまで上昇している。これから6カ月、12カ月後のシェアもぜひ楽しみにしてほしいですね。」
 → 大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」2008年5月


しかし、直近の2013年度第3四半期の決算は以下のとおり
 → Dell、第3四半期決算はコンシューマ事業が赤字に

 大企業向けビジネス 3億3,500万ドルの黒字
 公共ビジネス 3億5,200万ドルの黒字
 中小企業向けビジネス 3億4,900万ドルの黒字
 コンシューマ向けビジネス 6,500万ドルの赤字

コンシューマだけ赤字です。
非公開化が実現すれば、非採算部門の切り捨て圧力は減るかもしれませんが、儲かるかどうかはまた別の話。埒があかないようであれば、部門売却という話も出てくるかもしれません。

MM総研調べによるデルの国内シェア推移
(2011年のNECはレノボとの合弁シェアです)
デルの国内シェア推移


Dell Surface は出るのか?

Microsoftが少なからぬ金額を出したことで、MSのハードウェア部門的役割をDellが担う可能性もアナリストによって言及されています。

この取引は、Microsoft によるタブレット Surface にも影響を与えうる。Microsoft と Dell が組めば、Surface はよりパワフルになるだけでなく、ラインナップも充実するに違いない。
 → Dell の株式非公開化に向けた取引に Microsoft が参加-その問題点と OEM に与える影響とは? - インターネットコム


コストパフォーマンスの点でいえば、これまで通りMicrosoftがPegatronなどに直接発注した方が安く上がるとは思います。

Dell版Surfaceもやるかもしれませんが、企業向けソリューションの一部としてWinタブを組み込んで販売というのがMicrosoftの思惑かもしれませんね。


追記
 → デル非上場化をめぐるマイクロソフトの賭け - WSJ.com