05
17
2013
送電網キャパ限界、北海道のメガソーラー計画見直し相次ぐ

送電網キャパ限界、北海道のメガソーラー計画見直し相次ぐ

早くも北海道の送電網容量が一部限界に。

環境省などの試算によると、北海道には太陽光と風力による発電を開発する余力が約2850万キロワットあるとされる。毎冬500万キロワット台の道内ピーク電力を補って余りあるが、海底ケーブルの容量は60万キロワットしかない。発電所をいくら増やしたとしても、この容量を超えて本州の消費地へ送ることはできない。

 Jパワーは90万キロワットへの増強も検討しているが、開発余力からすれば、それでも足りない。再生エネ普及の旗振り役の経済産業省は「増強の必要性は認識しているが、まずは事業者が整備すべきだ」と、動きが鈍い。
 → 再生エネ固定価格買い取り制度:検証/中 送電網、相次ぐ接続拒否- 毎日jp


経済産業省は世界最大級の蓄電池を北電の変電所に設置し受け入れ量拡大を目指すが、さらなる対策が官民に求められそうだ。
 → 北海道のメガソーラー、計画見直し相次ぐ - 日経新聞



毎日新聞があげているのが北本連系(北海道・本州間電力連系)です。
どんなところかはこちらのレポートが詳しい。

北海道・本州間電力連系
出典: Jパワー

送電網は再生エネルギーの買取制度が始まる前から課題とされています。
人の都合で調整できる火力や水力発電とは大きく違うところです。

再生エネルギー 送電網の課題
出典: エネルギー庁

対策として大容量蓄電池の設置、出力抑制などが必要となってきます。

大容量蓄電池の設置、出力抑制


導入すればするほど、急激な出力変動は小さくなる
という論もあるのですが、これは電力融通しあえるだけの「十分な送電網」が前提条件です。今回の事例のように発電所が集中すると単純には成立しなくなります。

当然、送電網の整備にはコストが伴います。

大容量蓄電池の設置、出力抑制
出典: エネルギー庁


結局公的資金に行き着いたドイツ

また、送電網の強化は話題の “送電網分離” では解決しない点も覚えておきたいところ。

変動の激しい再生エネルギーにあわせて送電網を整備すると、送電コストは割高になります。そのため発送電分離を進めたドイツではその割高なコストを民間企業が嫌い、結局公的資金に行き着いています。

 → 蹴茶: ドイツ、送電網整備費用として新たに年間13ユーロの追加負担 [4.14]



自家消費推奨

こういった追加コストを減らすには発電分をその場で使う “自家消費” が一番なのですが、残念ながら民主党時代に制定された買取制度は、全量売り切った方が一番得になるように設計されています。

メガソーラーは工場のフル操業時に必要な電力の3・7%を賄える。災害時などで電力が足りないときは、工場の電力として使えるが、「平時はすべて売電に回したい」(担当者)考えだ。
 → 朝日新聞デジタル:ホンダ、売電事業参入へ 新工場に太陽光パネル2万枚


理由は簡単で、電気料金より売電価格の方が高いからです。
自給自足するより買ったほうが安い。

今後電力料金がどんどん上がれば自家消費がお得になる可能性もありますが、どちらにしてもあまりいい話ではありません。

ドイツで取られている自家消費を促す施策やP2G構想、バックアップ電源の問題など、グリッドの話題はいくらでもあるのですが、キリがないので興味のある方はぜひ調べてみてください。


関連
 レドックスフロー電池のような新しい蓄電池にも期待したいところ
 → 蹴茶: 寿命が非常に長い レドックスフロー電池 [2012.11.13]
 → 蓄電池・水素について 省エネルギー・新エネルギー部
 → 九州電力 「送電網 相次ぐ接続拒否」(毎日新聞:4月12日)報道に対する当社見解について
 → 再生可能エネルギーに関する五つの誤解 - Tech-On!