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ドイツ、Qセルズ破綻とFITの大幅改訂

かつては太陽電池パネル世界シェアNo.1だったドイツQセルズが破綻。
 → 独太陽電池大手が破綻 中国勢との価格競争で - 日本経済新聞

ドイツの事情に関してはドイツ在住の村上氏のブログが参考になると思います。
 小型の家庭用太陽光発電、ドイツの全量買取制度と日本の余剰買取り
  → その1 / その2 / その3

村上氏はtwitterなどで「失敗ではない」と擁護の立場ですが、私は“やや失敗”に分類される話ではないかと思います。FITのコンセプトは賛同ですが、ペース配分が拙かったような。

■ 当初は思惑通り

当初はドイツ政府の思惑通りでした。
FITで太陽電池の需要は膨らみ、Qセルズは日本勢を押しのけ世界シェア1位に。

ところがいつの間にか補助金は中国企業に流れ、Qセルズは破綻。補助金を止めようにも業界団体(BSW-Solar)が「倒産が続発し、失業者が増える」とロビー活動を繰り広げるという後にも先にも引けない状況です。

残ったのは今後十数年かけて国民が払い続ける補助金とスマートグリッドのノウハウです。後者があるので無意味ではないですが、かけた補助金分(※)の産業振興効果があったかどうかは微妙です。今後の検証が待たれます。

※ 仮に2010年で打ち切ったとして約7.2兆円(太陽光のみ、参考) 大雑把にGDPの規模を考慮すると日本だと12兆円程度の補助金をかけたことになります。風力発電の分もありますし、2011年以降も継続中なので実際はもっと多い。ドイツはユーロ安による好景気がこの負担をカバーし、家計への負担も最小限に抑えられた側面があります。

ユーロ安の恩恵を一身に受け、経済状況は日本よりもかなり良い(OECD調べ)

ドイツ 失業率推移と1人あたりのGDP


■ ノウハウを活かせるか

今後はこの先行して得たノウハウを産業振興に活かせるか。ここを後続のアメリカや中国に主導権を奪われるようだとFITはより失敗に傾きます。ドイツの血税で他国が通る道を整備したことになってしまいます。ドイツの国益抜きで考えれば尊い政策ですが。

村上氏がその3で取り上げている、日本のFITが本来の趣旨とは異なる方向で活用されるリスクについてはもっともだと思います。制度設計にライセンスはかかりませんので、ドイツの事例をうまく活かして欲しいです。
 → 蹴茶: 太陽光発電をすべて売電、「電気ロンダリング」 [8.11]

関連
 → 蹴茶: 孫正義氏 1キロワット時40円で20年間固定買い取りを検証する [2012.3.22]

福島の事故以前は太陽光発電というとネガティブな発言をする人が多かったのですが、事故後は風向きが全く逆です。太陽光発電のデメリットを言おうものなら御用学者扱いです。もう少し真ん中を歩けると良いのですが。