SpursEngine 体験記録

SpursEngine

Qosmio F50Wレビューのおまけ記事です。本来F50WはGPUとライバル機に較べれば良好な液晶、そして使い勝手の良い筐体目当てに買うモデルで、 SpursEngine目当てで買うモデルではないと思いますが、せっかく付いているので何ができるのか体験したところを紹介してみたいと思います。
 → 東芝、CellのSPEを4基搭載した映像処理用コプロセッサ

SpursEngine

SpursEngine とPS3に搭載されている Cell/BEを比較

 Cell/BE(PS3搭載品)SpursEngine
クロック3.2Ghz1.5Ghz?
SPE74
PPE
Control Processor
MPEG2 Encode/Decode
H.264 Encode/Decode

親類であって兄弟ではないというか、似てますが違いも多いです。PS3ではエンコード処理も結構な数のSPEコアを使ってソフトウェアエンコードしますが、F50W搭載の SpursEngineではSPEはほとんど使わず専用エンジンによるハードウェアエンコードとなります。
 → 『(解像度変換に)CELLプロセッサのSPEを4〜5基ほど活用している』

アップコンバートはPS3のCellもQosmioのSpursEngineもSPEで処理します。当然7つのSPEコアが使えるPS3の方が余裕があり、比較的高度なアップコンバート処理が可能。 一方SpursEngineのSPEは低クロック、かつ4つしか無いため処理を工夫(一部省略?)しているものと思われます。
 → 『アップコンバート中は)負荷率は4コアとも、100%に近くなる。』

この辺の「SpursEngineではアプコン処理を工夫」うんぬん話を東芝の人が語っている記事をどこかで見たのですが 忘れてしまいました。ご存じでしたらURLを教えてください m(_ _)m → メール

地デジデータの画質変換

これがSpursEngineを積んだ主目的と言っていいと思いますが、生のTS録画データのビットレートを落として録画することで、 録画時間を延ばすことができます。

これをCPUにやらせると録画中はまともに動かなくなってしまうので、SpursEngine内のハードウェアエンコーダーを 使ってバリバリ処理させることになります。PS3のようにSPEを駆使しての処理ではなく、ほとんどの処理は専用のトランスコーダ回路でハードウェア処理するようです。
 → 『「映像形式変換」に伴う作業では、SPEはあまり働いていない』

顔deナビ

面白そうな機能の一つである顔deナビ。 録画したデータをSpursEngineで顔抽出処理を行い、顔や音の盛り上がりを時系列で並べ、再生場面を選ぶ事ができる仕組みです。

顔deナビ このような顔一覧から選べる

データ解析は録画後に自動処理させることもできますが、未処理の録画データはあとでクイックメニューから処理を指示します。 1時間のデータを15分で処理できるという話もありますが、実際使ってみた感じではもっと時間がかかります。バックグランドで何もしないという前提の15分でしょうか。

便利そうだけども実際はあまり使わない機能かもしれません。

クイックメニュー  処理中

ハンドジェスチャーリモコン

ジェスチャー

Webカムに向かって手でサインすることで触らずに操作できるという謎機能。

G50系の機能で、F50系では使えないとあるので特に感想も書けないですが、キッチンで料理作りながらTV見たいという状況には便利 かもしれません。ただ、G50クラスの巨大な筐体をキッチンに持って行くかというとそれまた疑問ではあります。

アップコンバート機能

これが一番驚きのある機能かもしれません。

低解像度の動画データを高解像度化します。

なんでもかんでも高画質化できるわけではなく、映像ソースはかなり限定されますがDVDなどはリアルタイムでアップコンバートできるため、使ってみようという気になる機能です。

以下、クリックすると大きなキャプチャー画像が出ます。クリックで確認推奨。

まずは裂け谷のシーン。これは非常によく効いているシーンだと思います。
ただ裂け谷自体がぼんやりとしたイメージで作られているので、これが制作者の意図に沿うのかどうかはまた別問題ですが。

アップコンバート前

裂け谷 処理前

アップコンバート後

裂け谷 処理後

 

次はビルボからフロドへミスリルの鎧が手渡されるシーン。首回りの装飾に注目。
ここではわざと字幕を入れましたが、字幕は高解像度化されることでフォントのエッジが際だってしまい違和感を強く感じます。

アップコンバート前

ミスリルの鎧 処理前

アップコンバート後

ミスリルの鎧 処理後

 

最後はちょっとわかりにくいですが、画面左の岩のごつごつ感がいい感じでアップしています。

アップコンバート前

処理前

アップコンバート後

処理後

実際に動く様子を見た感想としては、効果的な場面もあるが逆効果な所もあるという印象です。 字幕は特に顕著ですが、それ以外でもシャープネスをかけたようにエッジが際だってしまうため、場面によってはざわついた印象が 強くなってしまいます。

理想的なアップコンバーターはもちろん単なる輪郭強調ではなく、MPEG2圧縮のように前後のコマ変化も巻き込んだ 膨大なデータ処理を行い、元々無いピクセルを生成、自然な高解像度を実現するものです。

それをリアルタイムでやっているわけですから、低クロックのSPEを4つしか持たないSpursEngineだと高度な処理は 荷が重いのかもしれず、簡易的な処理になっているのかもしれません。

 
あと、アップコンバート再生時は巻き戻しや早送りはできなくなります。


動画データのエンコード処理

プリインストールされている「DVD Movie Writer for TOSHIBA」がSpursEngineに対応しているそうです。 リードテックが出した自作ユーザー向けのSpursEngine拡張カードも添付ソフトは「DVD Movie Writer」でしたね。 「Ulead Video Studio11 Plus」と「WinDVD」は、SpursEngineを使用してない

デフォルトで設定されている変換設定は以下の通り

DVD Movie Writer クリックで画面全体を表示します

多少カスタマイズできます。

設定変更

DVD Movie Writer自身はホームビデオの作成ができる程度の簡単な編集をターゲットにしているので、 Adobe Premiere(Elementsも含め)のような編集ソフトの代わりにはならないのが残念。

カノープスの「FIRECODER WRITER」も『あくまで変換ソフトであり、編集やオーサリング機能は備えていない』ということなので、 この辺が今後解決するのかどうかは気になるところです。
 → トムソン・カノープス、高速AVC変換カードの詳細発表

東芝もSDKをアピールするなど裾野を広げようとしているので今後変わるかもしれませんが、現状ではSpursEngine拡張カードより Core 2 Quadの方が万能で潰しが効くため投資価値は高いだろうと個人的には思ったりします。
 → SpursEngineのイベントを東芝が来週実施、SDKの解説やソフト各社のアピールも  

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 → Cellの消費電力は、現在、SPE部分だけが示されている。

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