[FIT] 2年度目以降の負担額は不明、孫さん発言検証 etc.
蹴茶: 孫さんが触れたくない事実のおまけ。出典: 調達価格等算定委員会- 孫社長、ヒアリング発言 → 40円無いと造成コストが
- 電気料金の負担額は? → 初年度70~100円/月
- 来年以降の負担額は? → 経産省「わかりません」
- 導入量の想定は? → 去年の1.4倍
- FITの予算、上限は? → 上限なし
- サーチャージの上乗せタイミング → 詳細未定
- 建設コストは? → 日本32.5円、ドイツ21.6円
- ランニングコストは? → 年間1万円/kW
- なぜ国内価格は高い? → 比較グラフ
- 価格の見直しは? → 1年ごと?
孫社長、ヒアリング発言
FIT価格を決める委員会でのソフトバンク孫社長への聞き取り調査。
発言は先の講演との対比が際立ってますが、気になる発言もあります。
委員会ヒアリングにて(2012年3月19日、議事録)
少なくとも、40 円の20 年で試算したときに、二百数十カ所のうちの二百何カ所は、少なくとも造成コストうんぬんを数えたときに、われわれとしてはかなりこれは難しいなと。
本当であれば 42円、45円と言いたいところですが、これは一方、バランスもありますので、やはり最低でも40円、20年というほどのものがないと、仮に20年が18年になると今度は40円を42円などという掛け算で上げていかなければいけないことになりますが、仮に40円、20年でいった場合でも決して甘くないというのがわれわれの試算結果です。
それ以上はたくさんあればあるほどいいのですが、消費者への負担を考えると口にしづらい。
4/22 講演
孫さん「量産効果が効いて安くなる、去年原発と太陽光発電のコストが逆転してる」
主張の使い分けが見事です。
興味深いのは、コストの筆頭に “造成コスト”を挙げてます。量産効果と無縁です。
パワコンや架台など国内向けハードが割高と言うのなら、量産効果不足で筋が通りますが。
海外でハードが暴落したので、造成コストをFITの価格理由にしたのでしょうか。
もちろんアメリカでは原発より安くなった話はヒアリングでは触れてません。
「造成コストは発電コストには含まれない」などと言わないで欲しいですが。
孫さんのヒアリングが事実として、40円/kWhでないと造成コストがペイしないような場所には作らない方がいいのでは。人的リソースは有限です。粗造乱造にならぬよう、40円以下でも可能な数十カ所でスタートすれば良いのでは(被災地だけ40円設定などはどうでしょう)。
ちなみに、FITで試行錯誤を繰り返した欧州は屋根向けFITを重視してます。
屋根型は陸上より割高ですが、節電意識を高め、系統負荷も軽い利点があるためです。
そもそもメガソーラーの方がFITが手厚いというのが妙な話です。
屋根型より10MW超のメガソーラーの方が好条件という国は見たことがありません。
■ 孫さんの造成コストネック説を補強する話が出ていたので紹介します(追記)
再生可能エネルギーは本当にコストダウンするか? : アゴラ
現に米国では風力発電のコストは近年になって上昇してきている。また、太陽光発電についても、パネルの価格は下がるだろうが、設置に必要な労務コストなどはそれほど簡単には下がらない。
(略)
再生可能エネルギーは、一般に普及が進むにつれて、立地条件の良い場所が乏しくなってコストが高くなっていく。水力、風力、太陽光など、その効率性がすべて自然条件に制約されているエネルギー源なのだから、それは当然である。そういう意味では、立地適地の漸減に応じて、再生可能エネルギーの効率性は下がっていくことになり、限界費用は逓増することが確実だ。
第3回 調達価格等算定委員会 議事録
山内委員
「150 円/m²が500 円/m²以上のケースもあり得るということで、やはりこのような需要を見越して地代が上がるということが、今はあるということですか」
太陽光発電協会 茅岡事務局長
「特に変電所の近くなど、ある程度そういう立地のいい場所は高くなっているというケースがあるようです」
新設する送電線は事業者負担なので、造成費が安く、変電所の近い場所を求めて争奪戦が始まっています。よく言われる休耕田活用も簡単ではありません。
しかし、当初は遊んでいる屋根・土地の有効利用という話だったように思いますが、高いFIT価格が地代を釣り上げるのは避けられませんね。仕方ないですが。
これを踏まえて、SBの苫小牧メガソーラー計画を見ると
- 日照量は本土より少なめ
+ 雪が少ない、パネルが雪で覆われにくい(参考)
+ 夏涼しい、真夏の性能ダウンを避けられる(参考)
+ 平野
+ 地域内に変電所稼働(参考)
+ 分譲価格 9,000/m² から、リースも可(参考)
+ 国と県の助成金、交付税支援がある(参考)
初めは「どうして日照量の少ない北海道に?」と思ったのですが、変電所や造成コスト、地代を加味すると良い場所なのかもしれません。(ソフトバンク、北海道で国内最大級メガソーラー)
「原発より安い(発電コスト 数円/kw)」と言い、補助金では
「42円、45円と言いたい、たくさんあればあるほどいい」と言う孫さん。
私はどちらが真実でも良いので、事実を語って欲しいと思います。
もし両方事実と言うのなら、そのコスト差はなんのか。委員会で語って欲しかったです。
FITを注ぎ込めば、太陽光発電所が次々に立ち上がり、量産効果は間違いなく見込めます。
一方で、適地が減っていくことによる造成コストや立地問題はどうなるのか気になります。
造成コストや立地は量産とは別問題です。高額なFITの必然性はどの程度あるのでしょうか。
本来はそういうことを議論して欲しい委員会ですが、FIT価格を決めることしか役目を与えられていないので、全く機能していません。
電気料金の負担額は?
メディアによって若干試算が違いますが、初年度は月額70~100円(時事通信)。
20年間固定買取なので、根雪のように毎年増えていきます。
枝野経産相「何とか(初年度)月100円以内に収まるのではないか」
欧州のようなFIT導入量の上限が無いため、初年度 100円以内に収まるかどうかは制度設計上、注目ラインかもしれません。収まってくれれば良いのですが。
来年以降の負担額は?
回答はこれです。
13年度以降も太陽光を中心に導入が進み、家計や企業の負担が増す可能性もあるが、
経産省は「具体的な見通しは困難」として試算を公表しなかった。(毎日新聞)
うーん、なんという暗中模索っぷり。
前回お伝えしたとおり、孫社長は8000円が8500円になると主張(時期はぼかしてます)。
ドイツの一般家庭は2009年は約440円、2010年は約1200円を毎月負担しているとのこと。
出典: [PDF] 欧州の固定買取制度について Page 9
詳細: 蹴茶: [FIT] ドイツの負担額 サーチャージ費用 2003-2013 [2012.5.4]
(当初3年間は企業の利潤に配慮せよとなっており、大幅な引き下げは難しくなっています。)
導入量の想定は?
資料が見当たらないので、傍聴された松原氏のTweetを引用
2012年度中の導入量を太陽光前年度比4割増
を想定とのこと。
私は公的機関の2011年度の導入量実績データを見たことがないので、何GWかは不明です。
(委員会では住宅用太陽光は余剰電力の買取量からの推計された模様 by 松原氏)
大和総研の集計であればこちらに。
出典: 大和総研 / 太陽光発電市場:2011年の動向と2012年の見通し
FITの予算、上限は?
第1回 議事録 P25
上限なし。欧州では急増を防ぐため、なんらかの制限がよく付いてますが、初年度はフリー。
導入量の予測、制限については『この委員会の役割ではないかもしれない。』とかなり消極的で、ほとんど上限の論議はされていません。見直し期間については後述。
サーチャージの上乗せタイミング
第2回 議事録 P19
前年度の実績をいつ集計するのだろう?という疑問への解。
確かに今年は7 月始まりということですが、通常の年は年度は4月から始まるというところですが、これは実績データをある程度直近の、一番買取価格を決める段階で取れるところまでで、やはり考えざるを得ないと思っていますので、必ずしも年度という形でデータがない場合はその暦年のデータを使うとか、そういう工夫が必要になってくるかと思っております。
これも明快なルールが決まってないような言い分です。これから決めるのでしょうか。
建設コストは?
第5回 資料2 P6
委員会は非住宅で32.5万円/kW(発電協会の回答をそのまま採用)と設定しています。
参考として、ドイツのコスト $2700/kW 約21.6万円も紹介されています。
国内においても、DMMソーラーのように 25万円/kw~という事案も出てきています。
中国・台湾メーカーが積極的にアプローチしてきており、より大規模な導入であればさらに下がるのでは。
ただし、これは造成費、変電所までの送電設備等は入っていない。地代は維持費の方に含まれているので関係ない。
現在、法人向けの産業用システムは1kWあたり35万円程度というのが相場だと思います。それに対して我々は、容量にもよりますが25万円から提供を行なっていきます。もちろんこれは工事費込みですから、国内でも最安値になるのでは……と思っております。
→ 藤本健のソーラーリポート
ランニングコストは?
ランニングコストの想定が雑な気がするのですが、キロワット当たり年間1万円です。
現在主流の1~2MW級のソーラーであれば年間 1000~2000万円となりますが、これから出てくるであろう 30MWのメガソーラーともなればランニングコストを年間3億円として見積もることになります。ちょっと多くないですか?
左が太陽光発電協会へのヒアリング結果、右がそれを受けての委員会案。
なぜ国内価格は高い?
第1回 資料7 P14
委員会の見積もりではこのようになっています。
太陽電池は隣国中国・台湾が主要生産国なので、大量購入で価格差は逆転するかもしれません。
参考記事。システム+工事費・資材を含め 30万円/kWが見えてきたとのこと。
40円買取なら7~8年で初期投資は回収。残るは地代、人件費、造成、送電線コストなど?
→ 目標は建設コストの半減、メガソーラーの工法改革 環境ビジネスの今 - 日本経済新聞
関連
→ 立ち上がるメガソーラー事業、買い取り価格42円は高いか安いか:日経
価格の見直しは?
第7回 資料2 P5
半年ごとにFIT適用を受けた設備のコストデータを収集。
2年度目からはこれを反映させるとしています。
ただ
『法の施行後3年間は、再生可能エネルギー電気の供給者の利潤に特に配慮するという規定』
(第1回議事録より)
があり、大幅な引き下げは難しくなっています。
あとがき
私が今いろいろ調べているのはもっぱら太陽光なので、他の再エネはスルーしてます。
こういう突っ込みは国会議員やマスコミのみなさんにお願いしたいです...
2年度目のサーチャージ料が出てくる頃には枝野さんは政権に居るでしょうか。
委員会にも最初の顔見せだけで議論中は居ませんでしたが。
計画中メガソーラー一覧 第1回 資料7 P15
ソフトバンクの世界最大級クラスとなる苫小牧メガソーラーは4月発表のため未掲載。
電力会社編
電力会社以外編
1.委員会が売り手のFIT提案を丸呑みした理由
2.孫社長より危ない? 疑問を抱かない国会議員
3.スペイン 太陽光発電バブルの崩壊
4.ドイツのFIT負担額 サーチャージ費用 2003-2013
5.Q&A的なもの
パブコメ募集開始 締切日6月1日
パブリックコメント:意見募集中
29日 22:00 苫小牧メガソーラーなどいくつか追記、レイアウト修正