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[FIT] スペイン 太陽光発電バブルの崩壊

再生エネルギーバブルとしてよく挙げられるのがスペイン。
高いFITを設定したことで急激に太陽光発電が増加、破綻に追い込まれました。

下図はFITの推移ですが焦点は2007年、2008年の価格改定。

スペインFIT推移

2007年に買取価格が大幅アップ。これは「エネルギー消費における再エネ率20%を達成せよ」という“EU指令”と、またドイツのように再エネ産業を盛り上げたいというスペイン政府の思惑があったためです。
 → 欧州連合 - EU - エネルギーと気候変動に関する包括的提案について

政令(RD 661/2007、6月1日発効)で買取価格が引き上げられ、バブルが発生します。

スペインFIT RD 661/2007

50円近い買取価格もさることながら、25年以降も8割で買取続けるという設定も異常です。
複数名義で共同管理し、100kW以下の価格を悪用した大規模発電所もあったようです。
出典: www.juandemariana.org/pdf/090327-employment-public-aid-renewable.pdf

「日本のFITはこれより安いし、期間も20年限定だ」と思われた方がいるかもしれませんが、現在の発電コストは2007年当時の半分以下。決して他人事ではありません。

スペインFIT 発電コスト
出典: Solar Generation 6, Solar Photovoltaic electricity empowering the world, Greenpeace - EPIA

太陽光発電の急増に驚いたスペイン政府は、翌年から沈静化を図る政令を立て続けに出します。
FITの買取価格引き下げはもちろん、買取上限の設定、買取期間の短縮、補助金の停止、そして過去に遡って契約内容を変更する荒技までやっています(事実上のデフォルトです)。

ビリメリス氏(35)は投資資金を確保するため、貯金を下ろしアパートを抵当に入れて40万ユーロ(約4500万円)を超える融資を取り付けた。太陽に向かって傾けられた7つの台には計500枚の太陽光パネルが設置され、発電能力は80キロワット。9カ月以内に、ビリメリス家の発電施設から全国の送電網に電力供給が始まった。
(略)
今になって政治家らが、最初に投資の動機付けとなった価格保証の引き下げを検討しているため、ビリメリス氏らスペインで太陽光発電を起業した5万人以上が財政難に直面している。
 → スペイン:太陽光発電の起業家が破たんの危機-補助制度見直しで暗転 - Bloomberg


特に太陽光発電に関しては行き過ぎた促進策(2007年の政令)の結果、発電能力が政府の目標を大幅に超過し、買い取り義務を負った配電会社は追加負担分全額を電力価格に転嫁できず、巨額な赤字を計上した。

スペイン政府は、08年9月、太陽光の固定買い取り価格を引き下げる政令(RD1578/2008)を出して沈静化に乗り出した。10年にも再度、固定買い取り価格を引き下げ、既設の太陽光発電施設に対しても買い取り対象となる稼働時間に制限を加えるなどの対策を追加した
 → 太陽光発電 スペインの教訓―固定価格買い取り制度の光と陰:政策・法規制


この結果、2008年に激増した太陽光発電の新規導入量は2009年にはほぼゼロになります。

スペイン ショック
出典: CNE - Comisi醇pn Nacional de Energ醇^a - Informaci醇pn Estad醇^stica sobre las Ventas de Energ醇^a del R醇Pgimen Especial

現在は太陽電池が非常に安くなっているため、今後は徐々に導入量が戻る見込みですが、新規FIT登録が中止されていることもあり、未だに立ち直っていません。

2008年 → 2009年にかけて市場規模も激減
(IEA PVPSで発表されたマドリッド・カルロス 3 世大学 Dr. Vicente Salas 論文)

スペイン タリフ

当然、失業者も出ます。
2009年には契約社員 2万3700人削減、正社員 4100人が失職

スペイン タリフ
出典: Presentation of the IEA PVPS Workshop held in Fukuoka Dec. 1st, 2011

FITの急激な切り下げは何もいいことはありません。素早い投資判断のできるところは逃げ切るでしょうが、市民から資金を集めて立ち上げた市民団体が運営するような発電所は直撃を喰らってしまいます。先行した一部事業者だけが多額の補助金を得てバブルは終わります。

日本市場がまだ立ち上がっていない点、日本の閉鎖性をもってすれば、バブルは起きないかもしれません(それはそれで問題ですが)。しかし既に先例があり、予防線を張ろうと思えば張れるのですから対策はとっておくべきです。

○新原部長
「この法律上は、幾らにしたらどの程度導入見込み量があるかということに基づいて、例えば

バブルになりそうだから切り下げるとか、そういうことは一応想定していない

という状態になっております。」
 → 第2回 議事録 5ページ


肝心の委員会はまるで用をなしていません。
こんな他人事でいいのか?と思いますが。





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