2007年12月 SLIを調べてみる dynabook WXW SLI

dynabook WXWがSLI搭載で登場。

SLIというと玄人向けの印象が強いですが、メーカー標準スペックになりやや敷居が下がった感じもします。気をつけたいのはその特殊な性能。このレビューではSLIの効かないゲームを確認しつつ、DirectX10世代の最新ゲームをどの程度動かせるのか調べていきます。
 ⇒ dynabook WXW 79DW (公式shop1048) 

ao.gif 基本スペック

GPUはGeForce 8600M GT (256MB) のSLI(2枚組)構成です。
ドライバは79CWから若干バージョンアップし、156.64。

メモリクロックは700Mhzと、NVIDIA公式設定に忠実。おそらくGDDR3だと思いますが、GeForce 8600M GTノートの中では高い性能を発揮します。旧WXWはGeForce 8700M GTですが、こちらは逆にビデオメモリが遅かった(core/memory: 625/700)ので、違いはコアクロックのみということになります。

wxw_sli11.gif wxw_sli12.gif

capture_05122007_083536.jpg

 

ao.gif まず普通にGeForce 8600M GT SLIパワーをベンチで見てみる

前モデルとなる79CWとの比較。
79DW(GeForce 8600M GT SLI) vs 79CW(GeForce 8700M GT)の結果です。

 

79DW (SLI)

79CW

3DMark06

6574 (150%)

4386

3DMark05

12878 (140%)

9181

3DMark03

21423 (141%)

15211

FF11 v3 高

5590 (102%)

5495

三國無双 高グ

3915 (85%)

4592

三國無双 標準

6564 (87%)

7518

※ 3回計測でスコアの大きなブレがないことを確認し、その3回の平均値です(小数点未満は四捨五入)

SLIのおかげで3DMark系は順当にスコアアップ。ただ見てわかるとおり、FF11はほとんど変わらず、三國無双BBは逆に遅くなっています。FF11はCPUベンチと化しているので、CPUクロックアップを受けてのアップだと思いますが、三國無双はSLIが効かず、単にGeForce 8600 GT と 8700M GTの勝負になっていそうです。

SLIを活かすためにはゲーム毎のプロファイルが必要で、どのプロファイルが入っているかはForcewareの設定画面、もしくはNVIDIAサイトで見ることができます。中には裏設定としてプロファイルを持つ物もあります。
 → SLI対応ゲーム一覧(NVIDIA)  最後に裏設定されているゲームも載っています

wxw_sli13.gif

そのため、プロファイルに載ってこなさそうな国産タイトル(三國無双BB)や、古いタイトル(FF11)をメインに考えてるユーザーにとっては、SLIは無駄な投資になってしまいます。GeForce Go 7世代や、「GeForce 8700M GT」を選んだ方が良いことになりますね。

 

ao.gif SLIの効かない状態で、GeForce 8700Mと比較してみる

SLIが効かないとしたら‥‥ 非SLIで旧モデルと比較してみました。
79DW(SLI無効、GeForce 8600M GT SLI) vs 79CW(GeForce 8700M GT)。

 

79DW (非SLI)

79CW

3DMark06

3771 (86%)

4386

3DMark05

7833 (85%)

9181

3DMark03

13111 (86%)

15211

FF11 v3 高

5484 (100%)

5495

三國無双 高グ

3836 (84%)

4592

三國無双 標準

6517 (87%)

7518

※ 3回計測でスコアの大きなブレがないことを確認し、その3回の平均値です(小数点未満は四捨五入)

やはりSingleだと、79CWの「GeForce 8700M GT」の方が単純に速いです。79DWもGeForce 8600M GTとしては遅くない方ですが、コアクロックで劣る分、8700Mには負けています。

 

ao.gif 純粋にSLIの効果を見てみる

今度は同じ79DW同士対決で、SLI オン/オフの違いをチェック。
プロファイルを持たないFF11、三國無双ではほとんど変わりなし。3DMark系はしっかり効果が出ています。 

 

79DW (SLI)

79DW (非SLI)

3DMark06

6574 (174%)

3771

3DMark05

12878 (164%)

7833

3DMark03

21423 (162%)

13111

FF11 v3 高

5590 (102%)

5484

三國無双 高グ

3915 (102%)

3836

三國無双 標準

6564 (101%)

6517

 

ao.gif SLIは適用パッチが非常に多い

色々アップデートの多いVistaですが、特にSLI関連では次々とHotFixが出てきています。
今回は、Crysisインストール時に導入を求められる以下のHotFixのみ、導入しています。
 → Windows ゲーム開発に仮想アドレス空間の使用

他のHotFixはドライバ更新も同時に求められますが、東芝提供ドライバが古いのでHotFixも入れてません。最新ゲーム「Crysis」も今後DirectX10向けにチューニングするパッチが出る予定になっています。

参考4gamer記事
 → 
4Gamer.net: [KB936710] VistaとデュアルGPUの問題を解消するHotFix,NVIDIAは適用を推奨
 → 
4Gamer.net: [KB940105] GeForce 6〜8+Vista+3Dゲームの問題を解決するHotFix公開
 → 
4Gamer.net: 「Crysis」でSLI性能を向上させる「ForceWare 169.13」公式βドライバ

 

※ ここから実際のゲームプレイによる調査。
  FrapsによるFPS結果を載せていますが、横軸の時間は調査毎にまちまちです

    wxw_sli33.jpg wxw_sli34.jpg

     

    今回試したゲーム
     「Crysis」
     「LOST PLANET」

    どちらもDirect10対応ゲーム。

    左図では、ゲームに必要なスコアはロストプラネットの方が高くなっていますが、実際にはCrysisの方が求められるスペックは高いように思います。

ao.gif ロストプラネット (LostPlanet)

まずはカプコンのロストプラネットから。ベンチスコアは大手メディアのレビューで書かれているので、そちらも参考に。ここでは実際遊んでみた感想も交えて書いていきます。

    解像度によるFPS差

    画質設定はデフォルトのまま、解像度だけ変えてみます。WSXGA+(1680 x 1050)でも遊べますが、FPSが低く目が疲れやすいですね。モーションブラー時のもたつきが特に気になる感じです。

    実際にミッション7を頭から普通にプレイしたときのFPS変化。(測定はFraps

    wxw_sli22.gif

    ミッション7は吹雪のアウトドアステージで、敵も多く、負荷が結構あります。WSXGA+だと快適ラインの30 fps をほぼ常に下回っています。プレイ出来ないほどではないですが、操作と動きがずれるのでやっぱり目が疲れやすいです。

    wxw_sli26.jpg wxw_sli25.jpg

    もう少し厳密に測るため、今度はミッション8の冒頭から身動きせずFPSを測定してみました。

    wxw_sli24.gif

    動的なものが少ないのでFPSは安定していますが、WXGA+でないと30fpsを超えないのは同じです。

    wxw_sli23.jpg

    ミッション8の冒頭シーン。

    吹雪はないですが、原住生物AKの一種「トライリッド」が巣から続々と沸いてきます。

    参考
     4gamer.ney エイクリッド情報

     

    DirectXによるFPS差

    次はDirectXによる差をチェック。DX10の長所として「同じ画質レベルならDX9より軽い」という言い回しが使われますが、巷では「DX9の方が軽い」という逆の話もよく聞きます。

    そこで実際に調べてみたのが、以下の結果。どちらも解像度はWSXGA+です。
    やはりDirectX9の方が若干ですが軽め。体感的にはほとんど変わらないですが。

    wxw_sli27.gif

    SLIの効果

    SLIのオン、オフでFPS測定。ちゃんとSLIの効果が見られます。
    ただSingle動作に較べるとFPSの変化が激しい。

    wxw_sli28.gif

    AFR、SFR

    SLIには色々な動作モードが存在します。基本的には標準設定に任しておけばいいのですが、表示がバグる時はいじる必要が出てきます。おおざっぱには以下の2モードが有名です。
     → http://www.4gamer.net/specials/3de/050621_crossfire/050621_crossfire.shtml

    ◎ Alternate Frame Rendering 通称AFR フレーム毎に担当GPUを変え、分担することで負荷軽減
    ◎ Split Frame Rendering 通称SFR 同じフレームの画面を2分割。上と下で分担して負荷軽減

    wxw_sli36.gif

    モード変更はNVIDIAコントロールパネルの‘3D設定の管理’タブから。

    ロストプラネットではどっちゃでもいいようです。標準設定のままで良いと思います。

    wxw_sli29.gif

    どのくらいビデオメモリを消費してるのか?

    Vistaになりビデオメモリ監視ユーティリティが使えなくなってしまい、不明です。 

     

ao.gif クライシス (Crysis)

話題の新作「Crysis」。NVIDIAもロストプラネットの次はこれ、とプッシュしていますが、確かに細部の綺麗さはちょっと別格です。ただ、問題としてロスプラよりずっと重い(^^;

wxw_sli30.jpg wxw_sli31.jpg

    wxw_sli37.jpg

    DX10では恐ろしく重くなるイベントシーン。

    重すぎて紙芝居になるため、サクサク進む解像度と較べると、経過時間も長くなります。

    解像度によるFPS差

    ロストプラネットと同じく、Frapsで計測したのが次の結果です。

    wxw_sli29.gif

    WSXGA+では重いためにスナイピング時にちょっと気持ち悪くなります。
    WXGA+でも30fpsに満たず、快適とはほど遠いです。目線を激しく動かすとたちまち酔います(^^;

    ステージ間イベントは撮り置きのムービーではなく、リアルタイムレンダリングするのですが、WSXGA+だと処理が追いつかないため、声が先行し、あとから紙芝居で画面が付いてくる状態です。

    DirectXによるFPS差

    普通にGameSpyから起動するとDirectX10モードになってしまうので、DirectX9で動かすために
     スタートボタン → ゲーム → Crysisアイコン右クリック → Direct 9でプレイ とたどります。

    wxw_sli32.jpg

    wxw_sli30.gif

    DirectX9だと明らかに軽いです。まず第一にメニュー画面が相当軽くなります。
    プレイも体感では若干軽く感じますが、上のデータでも明らかに違うのはイベントシーンです。WSXGA+でも声と絵が一致してくれます。

    AFR、SFR

    これまでの結果はAFRでの測定ですが、SFRモードにするとさらに重くなります。
    パフォーマンス的に劣ることが多いと言われるSFRですが、Crysisでは確かにAFRよりも重いようです。

    wxw_sli35.gif

    Crysisのバグ

    wxw_sli38.jpg

    見つけた描画バグその壱。
    一番目立ったのはこれです。

    AFR、SFRどちらでも発生。
    SLIを切っても出ます。

    あとGPUではなくCrysis側のバグかもしれませんが、撃った敵が不自然な形で跳ね飛んだり(物理エンジンのバグ?)、敵が位置ずれを起こしたり、スタックすることもしばしばあります。

     

ao.gif おまけ ロストプラネット と Crysis どっちが面白い?

DirectX10対応を謳う二大タイトル。

Crysisは風景のリアルさ、人の肌の生々しさはまさにトップクラス。草木の描写は圧倒的で、ロストプラネットの上をいきます。ただ、先のバグに見られるようにマップの作り込みが雑なのは気になりました。自由度が高い上にマップがかなり広く、全部作り込むのは実質無理なのかもしれませんが。

ゲーム性という点では、基本的に似た武器で敵を片っ端から倒すしかなく、途中だらけます。終盤、敵が変わりますが、そこからはヘッドショットも何もなくなりさらに大味な展開に。そして実は今回が第一部。伏線張りまくったまま、次に続く形で終わってしまうのでした。シングルプレイの独断採点5/10

LostPlanetはイベントこそリアルタイムレンダリングではないものの、描写は十分綺麗。開発チームが力を入れただけあって、雪景色の描写はCrysisより雰囲気出ています。溶岩ステージもいいですね。

また、後半ステージで必須となる搭乗ロボット(VS)の動きは逸品。搭乗時のスムーズな動きは惚れ惚れします。ゲーム性もさすがカプコンで、だれることなく最後まで遊べます。捕らえた敵があっという間に味方になるなど、シナリオはCrysis以上に無理ありますが(^^; シングルプレイの独断採点7/10

 

ao.gif まとめ

ハイエンドGPU不在の解として出てきたSLIですが、その効果は万能ではないため下調べが必須です。やりたいゲームがNVIDIAのSLI対応リストに載っているかどうか。載ってなければもう少し待って、今後出てくるであろうシングルGPU(GeForce 8800M等)にした方が良いと思います。

その「GeForce 8800M」は性能ではシングルで8700M GT SLIの上をいくため、どんなゲームにも実力を発揮できる真のハイエンドGPUといえますが、製品が出てくるのは年明けになりそうです。来年1月のMacWorldで新型MacBook Proが出ると言われているため、これが最速の8800Mデビューになるかもしれませんね。

#あと、SLIだとフルスクリーンのオンオフに時間がかかります。
 ⇒ dynabook WXW 79DW

 → 蹴茶 3Dゲームをノートで